血縁関係のあるご両親とは違い、ご主人のご両親となると、人によって全くケースが異なります。
お嫁さんが精神的に追い詰められる事も、少なくありません。
人によって感覚が違い、相性も違ってくるのに、安易に人生の大先輩であるお舅(しゅうと)さんや姑(しゅうとめ)さんを、心理学のようにタイプ別に分けようとは思いません。
ただ、実際にあったケースを例に、私なりに考えてみたいと思います。
今回は、お風呂に入ってくれない姑さんについてのお話です。
デイサービスに丸投げしたお話
私が働いていたデイサービスに、お嫁さんと姑さんが見学にいらした事がありました。
事前にお嫁さんから頂いた電話によると、姑さんが認知症になり、お風呂に全く入らない事で悩んでいるというお話でした。
確かに、姑さんの近くに寄るとアンモニア臭がするほどだったので、長いこと入浴していなかったようです。
お嫁さんはかなりの努力を続けてきたのだと感じました。
認知症と一言で言っても、全ての認知症患者さんがお風呂嫌いになるわけではありません。
認知症に伴って現れた症状の一つが、お風呂嫌いだったのです。
だから、認知症患者さんの中には、お風呂に何時間も入ってしまう方もいらっしゃいました。
ですが、実際に認知症の症状として多いのが、お風呂に入らなくなる・服に季節感がなくなる(夏にコートを着るなど)・料理をしなくなる・掃除ができなくなる(掃除については体力の低下や病気が原因になる事も)など。
一概には言えませんが、何らかの変化があるのです。
姑さんはお嫁さんとケアマネージャーに説得されて、「集会所に見学に行きましょう」と、気が乗らないのに連れて来られた感じでした。
姑さんは「デイサービス」という言葉が理解できないので、ずっと「公民館」だと思って話をしていました。
ここで大切な事は、恐らく「一人で抱えこまない」という事なのでしょう。
第三者であるケアマネージャーが入った事で、この姑さんはデイサービスに見学にまで来たのですから。
その先は、デイサービスの職員がうまく話を進めていきました。
それは、とりあえず正規の申込書を申請するのではなく、「試しにあさってでも来てみたらどうでしょう。食事も付いてるし、お食事だけでもいいですよ」と、「ちょっと寄ってみたら?」という感覚で体験通所を勧めていました。
すると姑さんは「そこまで言うなら、一回だけ来てみようかしら」と、ご本人も承諾。
そして姑さんはデイサービスに1日だけ体験通所に来る事になりました。
「1日だけ」と言いながら、デイサービスを楽しみにしていたご様子の姑さん。
お風呂を勧めると、やはり拒絶状態でした。
ですが、施設の職員は経験値が違います。
くどくど説得するのではなく、楽しい雰囲気の中、勢いで入浴を促していました。
環境や人が変われば、ご本人の気持ちも変わる・・・のだと思います。
一応、入浴の順番はこの日の一番最後になりました。
脱衣所でヘアピンを取ると、髪にヘアピンのサビの後がはっきりと付いていました。
入浴していなかったのは1ヶ月どころではなかったのでしょう。
もしかしたら、1年以上だったのかも知れません。
髪を洗っても、簡単にはサビが消えませんでした。
お嫁さんの話では、オムツもずっと替えていないそうで、オムツを脱いだ時に「それ、捨てないでね。もったいないから、また後で履くから」と言われました。
オムツも、さすがに交換しなければならないだろうと、お風呂から上がった時に「今洗っているので、次の時に使いましょう」などと嘘をついてしまいました。
紙オムツは洗えないのですが、施設には専用の洗濯機があるように思えてしまうのでしょう。
ご本人はお風呂に入った事で、とてもサッパリした雰囲気でした。
何よりも、食事も付いてて、おやつもあって、1日中イベントみたいなスケジュールがあり、銭湯みたいなお風呂にまで入れるなんて、とても楽しかったようです。
しかも、お財布を持って行ってはいけない規則になっているので、ご本人は全て無料のサービスだと思っていました。
お嫁さんと息子さんが払って下さっていたのと、ご家族が「タダだと思っているなら、そのままにしておいて欲しい」と仰ってたので、そのままにしておきました。
ご家族の最大の悩みは「入浴」だったので、これで一つクリアする事ができたようです。
姑さんは、それから毎回「1日だけ」と言いながら、週に2回通い続けてくれました。
多分、今もお元気に通っていらっしゃる事でしょう。
専門家に相談しよう
このケースは、ケアマネージャーに相談した事で問題解決に繋がりました。
ほとんどの介護生活は何年も何年も続くものです。
一人で抱え込んだら、問題は蓄積していく事でしょう。
ケアマネージャーでも役所でも、地域包括支援センターや民間窓口でも、まずは相談してみましょう。
内容によってはちょっぴり時間がかかるかも知れませんが、きっと一筋の光が見えて来るでしょう。
お嫁さんが説得してダメだった事も、このケースのように、第三者が入る事でうまくいくかも知れません。
忙しくて大変でしょうけれど、まずは電話でもメールでも、連絡を入れてみましょう。
それだけで、問題解決に向けてスタートできます。
ぜひ、時間を作って専門家に連絡をしてみて下さい。
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