仏教では、お亡くなりになった方が戒名(かいみょう)というお名前を頂く事が多いのですが、戒名とは何でしょうか?
そもそも戒名というのは、仏門に入る時に受ける名前の事なので、亡くなった時にだけしか頂けないというものではありません。
仏教においては仏門に入る証として、かつ戒律を守るしるしとして戒名を受ける事ができるのです。
なので、出家修道者に対して授戒の師僧が戒名を与えるようになっています。
そして、日本において「人は死後に成仏する」という死生観があるため、故人に戒名を受けるという風習ができました。
ですので、戒名が必用かどうかは、故人やそのご家族、親族が宗教観、死生観をどうとらえているかによって、随分と答えが違ってくるもの。
中には無宗教のご家庭や、キリスト教など仏教以外の宗教、また、一部の仏教において戒名を受けないというケースもあります。
また、ご家族が無宗教で「必要ない」としても、ご親族が「戒名を頂かないなんてとんでもない」と仰る事もあるので、戒名についてはご家族だけではなく、ご親族ともお話合いをして決めていくといいでしょう。
法名(ほうみょう)というのは、戒名に似た、受戒後の名前の事です。
一言で仏教と言っても仏教の宗派は数多く、しかも簡単に分類できないほど深い意味を持ちながら枝分かれしていった時代がありました。
そんな仏教ですが、時代をさかのぼってみると、大きく2つに分ける事ができるのです。
それは上座部仏教と大乗仏教。
そして仏門に入る時に頂くお名前を、上座部仏教では「法名」、大乗仏教では「戒名」と呼ばれます。
ただ例外があり、浄土真宗においては大乗仏教ではありますが、「戒名」ではなく「法名」を受ける事になっています。
少々ややこしいのですが、浄土真宗においてはお焼香も他宗とは異なります。
他宗では抹香を3回つまむところ、浄土真宗では1回となるのです。
お線香のあげ方なども異なり、同じ大乗仏教であっても、お葬式の場面で他宗とは全く違う事が多いので、事前によく理解しておくといいでしょう。
また、日蓮宗においては「戒名」でも「法名」でもなく「法号(ほうごう)」となります。
色んな掲示板サイトでよく見かけるのが、このようなキリスト教に関する質問。
キリスト教には戒名はないとされています。
また、戒名に似たようなお名前もありません。
クリスチャンに縁のない日本人はどうしても戒名やお香典、弔問を気にかけてしまいますが、キリスト教においては日本の風習は考えないで、外国でお葬式をするくらいの気持ちでいればいいでしょう。
キリスト教にはお香典はございませんし、お線香がないからお線香をあげに行くといった事もありませんし、それに似たような事もございません。
「お香典」を「お花代」として包む事もできますが、かえってご家族に「仏教の風習」というイヤな思いを押し付けるおそれもあります(「お花代」という名目の「お香典」という解釈)。
クリスチャンの場合、「故人にはお世話になったけどお葬式のご連絡がない」と気にする方は多いようですが、「何かさせて欲しい」と「お花代」を包む前に、電話でご家族のご様子を伺っておきましょう。
お葬式に呼ばれないのは、クリスチャンである少人数のご家族だけでお見送りをしたいから。
心から神様にお祈りを捧げたいのでしょうね。
ご家族が本当に「お花代」や訪問を断ろうとしている場合は、無理に押し付けずに「何もしない」という心遣いも大切。
そして、ご自宅で黙祷をしましょう。
階級のようなものはあるの?
仏教の世界では仏門に入る前の名前を俗名と呼び、故人についてはその宗派により戒名・法名・法号を受けます。
法名・法号については(言葉は悪いかも知れませんが)階級のようなものはなく、二文字の名前を受けます。
ですが、戒名には階級のようなものがあり、それによって名前が異なっていきます。
その段階はお金をたくさん払ったからといって上位にいけるわけではなく、先祖代々のお寺への貢献度などによるものなのです。
そして、その階級によってお布施も異なっていきます。
階級については以下のようになります。
院殿号(いんでんごう)・院号(いんごう)
戒名の中では最高位になります。本来は院号は下位になるのですが、権力者が院殿号を用いた事から、江戸時代より事実上の最高位となりました。
庵号(あんごう)・軒号(けんごう)
庵号は院号に継ぐ尊号。庵号の庵はいおりの事で、「草や木を結んで造った粗末な家のこと」を意味しています。
軒号の軒とは建物の意味で、もとは大寺院の敷地内に建物を一棟(に相当するお布施を)寄進した信者が軒号を受けていましたが、今はその家系か、院号の分家、居士号が立身出世した時に贈られているそうです。
道号(どうごう)
真言宗・天台宗・浄土宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗などで用いられる号。
宗教活動や公益活動の功績により、道号の長さは異なります。
律宗と高田派を除く浄土真宗は道号を用いません。
位号
戒名の下に付けられる以下の文字の事です。性別や年齢、功徳報恩や社会功績などにより異なります。
居士(こじ)・大姉(だいし)
強い信仰心を持った信者に贈られます。
信士(しんじ)・信女(信女)
宗派によっては清士・清女、清浄士・清浄女、善士・善女とも。
信仰心があり宗教活動に貢献する信者に贈られます。
童士(どうじ)・童女(どうにょ)
宗派により大童子・大童女、清童子・清童女、禅童子・禅童女とも。
未成年(4~17歳)のうちに亡くなった人に贈られるのが一般的です。
孩子(がいじ)・孩女(がいにょ)
2~3歳で亡くなったお子さんに贈られます。
嬰子(えいじ)・嬰女(えいにょ)
0~1歳で亡くなったお子さんに贈られます。
水子(すいじ)・水女(すいにょ)
死産や乳児(産まれたばかり)の頃に亡くなったお子さんに贈られます。
一般では「水子」を「みずこ」と読むことがありますが、戒名の場合は「すいじ」となります。
また、これらの階級については宗派やお寺によって多少異なり、階級によってお布施も変わってきます。
各ご家庭で戒名がどこの階級に値するか分からない時は、お寺や葬儀社にお伺いする事が一番ですが、一つの目安として、故人に近いご家族・ご親族の位牌に印字されている戒名か、墓石の側面や裏に刻まれている戒名をご確認するのもいいでしょう。
戒名を頂く際にお布施はかなり高額になるものですし、ご家族がお元気であっても早めに知りたいことは多々あるかと思います。
ご親戚からの情報が少ない場合は葬儀社が調べて下さるので、電話やメールで一度確認してみるのも、一つの心の準備となります。
どこかでご確認しておくといいですね。
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